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当直の待機時間、電車での移動、外来と外来のあいだの30分。
医師の1日には、まとまらない空き時間が点在します。 そこに本を1冊持ち込めたら、という話はよく聞きます。
Kindle Unlimitedは、その空き時間を埋める道具として名前が挙がるサービスです。
ただ、これは「読む時間が増えるサービス」ではありません。 増えるのは選択肢の数だけです。
この記事では、公式ページに書かれている条件だけを並べたうえで、医師が登録して意味がある場面と、やめておいたほうがよい場面を分けます。
先に結論です
- 月額980円(税込)で、対象者には30日間の無料体験があります。 金額の話はここで終わりです
- 医学書と専門書は、基本的に対象外です。 仕事の本を読み放題で読む用途には向きません
- 読む時間が先にあって、読む本が足りていない人だけが得をします。 逆の順番では回収できません
登録の可否を分けるのは、980円を払えるかどうかではなく、月に何時間読めるかです。
公式に書かれている条件は6点です
Amazonの登録ページとヘルプページに記載があるのは、次の6点です。
- 月額980円(税込)。 キャンセルするまで自動で更新されます
- 対象となる人は30日間の無料体験に登録できます。 無料体験が終わると、自動的に月額料金のプランへ移行します
- 対象は500万冊以上の電子書籍です
- 一度に借りられるのは最大20タイトルまで。 返却期限はありません
- Kindle端末、スマートフォン、パソコン、タブレットの無料Kindleアプリで読めます
- カタログのタイトルは随時変更されることがあります
料金は変わることがあります。登録前に、必ず公式ページで最新の金額を確認してください。
「500万冊以上」の中身を誤解しないでください
ここが最初の分かれ目です。
500万冊という数字は事実ですが、そこに入っているのは、あなたが読みたい本とは限りません。
医師が期待しがちで、実際には満たされないのは次の3つです。
- 医学書と専門書。 教科書、ガイドライン、専門誌の類は、基本的に読み放題の対象になっていません
- 話題の新刊。 出たばかりのベストセラーは対象に入りにくい傾向があります
- 特定の1冊。 読みたい本が決まっているなら、その本が対象かどうかで話は終わります
対象かどうかは、商品ページのKindle Unlimitedのバッジで判断できます。KindleアプリでKindle Unlimitedのフィルターをオンにすれば、対象の本だけを絞り込めます。
登録する前に、読みたい本を3冊思い浮かべて、その3冊がバッジ付きかを確認してください。 1冊も付いていなければ、それが答えです。
医学書については、読み放題ではなく1冊ずつ選ぶ話になります。その選び方は別の話題なので、ここでは扱いません。
医師が読めるのは、机の前ではありません
私が実際に読めている時間帯は、机に座っているときではありません。
- 当直の待機時間。 呼ばれるまでの、寝るには短く、作業するには落ち着かない時間
- 移動中。 電車、待合、学会会場への往復
- 外来と外来のあいだ、手術と手術のあいだの細切れ
この3つに共通するのは、紙の本を持ち歩けないという点です。当直バッグにハードカバーを1冊入れる余裕はありません。荷物の考え方は当直バッグの中身でも書いています。
スマートフォン1台で本棚ごと持ち歩けることが、このサービスの実質的な価値です。 冊数ではありません。
逆に言えば、すでに紙の本を読めている人が乗り換える理由は薄いということです。
目と睡眠の話を、医師として書いておきます
読み放題を勧める記事はここを飛ばしますが、書いておきます。
就寝前に明るい画面を見続けると、寝つきが遅れることが報告されています。 当直明けや夜勤前後のように、限られた時間で眠らなければならない働き方では、これは無視できません。
現実的な対処は3つです。
- 端末の明るさを下げる。 部屋の明るさに合わせて、読める最低限まで落とします
- 自ら強く発光しない画面を選ぶ。 電子ペーパー式のKindle端末は、この点でスマートフォンより無難です
- 寝る直前の読書を「入眠の手段」にしない。 眠くなるまで読む習慣は、画面時間を延ばす方向に働きます
もうひとつ、当直中に読む場合の注意があります。
集中して読み込むと、院内の呼び出しに気づくのが遅れます。 通知音量と、机の上の端末の位置は、読み始める前に確認してください。当直中の睡眠と休息の設計については寝当直バイトの実態にも書いています。
なお、この記事は一般的な情報提供です。睡眠に関する個別の相談は、主治医または産業医にしてください。
20タイトルの上限は、思ったより早く埋まります
一度に借りられるのは最大20タイトルまでです。返却期限がないぶん、返す動機も発生しません。
「あとで読む」で入れた本が20冊たまると、新しい本を借りるたびに、どれを返すかを選ぶ作業が生まれます。
これは小さいようで、地味に時間を取ります。 医師にとって、判断の回数が増える仕組みは負債です。
対策は1つです。借りるのは、今週読む本だけにしてください。 気になった本は、借りずに欲しいものリストへ入れておけば足ります。
あわせて、カタログのタイトルは随時変更されます。 読みかけの本が対象から外れることがあります。長編を分割して読む使い方とは相性がよくありません。
元が取れるかは、冊数では計算できません
「月に1冊読めば元が取れる」という説明をよく見ますが、この計算は成り立ちません。
読み放題で読む本と、お金を払って買う本は、同じものではないからです。980円を回収したいがために、読みたくもない対象本を探し始めたら、それは節約ではなく作業です。
判断の基準は1つで足ります。
先月、本を読む時間が月に3時間以上あったかどうか。 あったなら選択肢を増やす意味があります。なかったなら、増えるのは未読の山だけです。
無料体験の30日間は、この確認のために使ってください。面白い本を探す期間ではなく、自分が実際に読めるかを測る期間です。
登録しないほうがよい人は4つです
- 医学書と専門書を読み放題で読みたい人。 期待している本はほぼ対象外です
- 読みたい本が1冊に決まっている人。 その1冊を買ったほうが、確実で安く済みます
- 先月、読書の時間が取れていなかった人。 サービスを変えても時間は増えません
- 解約の判断を忘れる自信がある人。 無料体験は自動的に有料へ移行します
4つ目が最も多いパターンだと思います。無料体験に登録する日に、カレンダーへ解約判断の予定を入れてください。 これをやらないなら、登録しないほうが損をしません。
登録するなら、先に決めておく3つのこと
- 読む端末を決める。 就寝前に読むなら、電子ペーパー式のKindle端末のほうが無難です
- 借りるのは今週読む1冊だけにする。 20タイトルの枠を最初から埋めない
- 解約判断の日をカレンダーに入れる。 無料体験の期限より数日前に置きます
まとめ
- 月額980円(税込)、対象者は30日間の無料体験。 終了後は自動で有料へ移行します
- 対象は500万冊以上。ただし医学書と専門書は基本的に含まれません
- 一度に20タイトルまで、返却期限なし。 カタログは随時入れ替わります
- 効くのは当直の待機時間と移動時間。 机の前で読む人向けのサービスではありません
- 登録しないほうがよい人は4つ。 とくに、解約判断を忘れる人は入らないでください
読む時間がある人にとっては、選択肢が増えるぶん確実に得です。時間がない人にとっては、月額980円で未読を増やすだけです。
その差は、サービスの側ではなく、自分の先月の過ごし方を見ればわかります。
働き方そのものの設計については、診療科と勤務先の事情で答えが変わります。
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