長時間労働医師への面接指導について、現場で聞く声は2つに分かれます。
「うちの病院は声がかからないけれど、やらなくていいのか」
「忙しいのに面接を入れられても困る。断れないのか」
どちらも、制度を知っていれば答えが出ます。この記事では、受ける側の視点で整理します。
なお、この記事は一般的な情報提供です。個別の運用については、勤務先の労務担当か、各都道府県の医療勤務環境改善支援センターに確認してください。
受けることは、対象医師の義務でもあります
まずここから。
面接指導の実施は医療機関の管理者に義務づけられていますが、それだけではありません。
厚生労働省のFAQには、こう書かれています。
面接指導の実施は医療機関の管理者の義務であるとともに、面接指導を受けることは面接指導対象医師の義務でもあります
「忙しいから今回はパス」は、制度上できません。
そして、実施されなかった場合には病院側にも重い話がついてきます。医療法に基づく立入検査で、管理者が正当な理由なく面接指導を行っていないと判明した場合、都道府県は開設者に改善命令を出すことができ、命令に違反した場合の罰則規定もあります。
対象は「月100時間以上になると見込まれる」段階
対象になるのは、時間外・休日労働時間が月100時間以上になると見込まれる医師です。
超えてからではありません。 見込みの段階で対象になります。
A水準の医師については、一定の疲労の蓄積が確認されない場合に限り、月100時間に到達した後に遅滞なく実施する形でもよいとされています。裏を返せば、疲労の蓄積が認められる場合は、到達前に実施する必要があります。
上限の仕組みそのものは、こちらで整理しています。
「疲労の蓄積」はチェックリストで判定されます
判定の基準の1つとして示されているのが、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストです。
厚生労働省は、条件をこう読み替えるよう示しています。
疲労蓄積度チェック:自覚症状がIV又は疲労蓄積度の点数が4点以上(令和5年4月に改正した「労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年改正版)」に基づく)
2023年の改正で、食欲、睡眠、勤務間インターバルに関する項目が追加されています。以前の版で「負担度」と呼ばれていたものが「疲労蓄積度」という表現に変わりました。
このチェックリストの結果が、面接指導の時期を左右します。 正直に答えてください。
誰が面接指導をするのか
面接指導を行うのは、面接指導実施医師と呼ばれる医師です。要件はこうなっています。
- 医師法に基づく医師免許を有すること
- 所定の講習を修了し、修了証を取得していること
産業医であっても、この講習の受講が必要です。 産業医資格があるから自動的に実施医師になれる、ということはありません。
逆に、産業医でなくても、講習を修了すれば実施医師になれます。
自分の病院の管理者は、実施できません
ここは受ける側にとって重要な点です。
FAQにはこう書かれています。
面接指導対象医師が勤務する病院又は診療所の管理者は、当該面接指導対象医師に面接指導を実施することはできません
院長が自分の部下を面接指導する、という形は取れません。
また、面接指導実施医師は、自分が所属する医療機関以外の医師に対しても面接指導を行えます。 外部の医師が実施する形もありえます。
所属長に知られたくない場合
これも実務で気になる点だと思います。
法令上、管理者が所属長に面接指導の実施を連絡する義務はありません。
ただし、面接指導は原則として所定労働時間内に実施することが想定されているため、業務管理の都合上、所属長が把握できるようにするのが望ましいとも示されています。
そのうえで、厚生労働省は「所属長に知られたくない場合も想定される」と明記し、そうした場合の相談先を含めて、通知に関するルールを医療機関ごとに整備するよう求めています。
つまり、扱いは病院ごとに違います。 気になる場合は、面接を受ける前に労務担当へ確認しておくのが確実です。
結果と意見書は5年間保存されます
面接指導が終わると、結果と意見書が作成されます。
医療機関の管理者には、面接指導の結果および意見書、その措置内容について5年間の保存義務があります。
複数回受ける医師の場合、過去の面接内容を引き継げる体制を整えることも求められています。1回ごとに切れている記録ではなく、積み上がっていく記録だと考えてください。
問診票に決まった様式はありません
面接の前に問診票を書くことがありますが、法令で定められた様式はありません。
厚生労働省は、ロールプレイ研修で使われている問診票や、面接指導の進め方のガイドにある「長時間労働面接振り返りシート」を参考に、各医療機関で作成するよう示しています。
病院によって聞かれる項目が違うのは、そのためです。
なお、健康診断の結果を面接指導実施医師に提供することは、管理者に義務づけられているわけではありません。提供するかどうか、どの項目を渡すかは、医療機関ごとのルールによります。
実施する側に回るという選択肢
最後に、担う側の話です。
面接指導実施医師になるための講習は、オンラインのeラーニングで、受講は無料です。
- 動画の視聴時間は約200分
- 修了証の発行には、動画視聴に加えて確認テスト20問に全問正解が必要
- 修了証に有効期限はありません
- 受講には医師等資格確認検索システムへの登録が必要で、登録には数週間かかります
4番でつまずく人がいるはずです。 医師法に基づく2年に1度の届出を行っていない場合、この検索システムに氏名が載っていないことがあります。その場合は掲載申請から始める必要があります。
産業医の仕事に関心がある場合は、こちらも参考にしてください。
まとめ
- 面接指導を受けることは、対象医師の義務でもある
- 実施しなかった場合、病院には改善命令と罰則の規定がある
- 対象は「月100時間以上になると見込まれる」段階。超えてからではない
- A水準は、疲労の蓄積が確認されない場合に限り、到達後の実施でもよい
- 疲労の蓄積は、チェックリストで自覚症状IVまたは4点以上が目安
- 実施できるのは講習を修了した医師。産業医でも受講が必要
- 自分の病院の管理者は、自分に面接指導を実施できない
- 所属長への連絡は法令上の義務ではないが、扱いは病院ごとに違う
- 結果と意見書は5年間保存される
「受けたくない」は通りませんが、「どう扱われるか」は確認できます。 気になる点があるなら、受ける前に労務担当へ聞いてください。
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ご注意
この記事は一般的な情報提供であり、個別の労務判断を示すものではありません。記載内容は厚生労働省が公開している資料および面接指導実施医師養成ナビのFAQをもとに整理していますが、制度は見直しが進められており、要件や運用が変わることがあります。勤務先での具体的な取り扱いについては、勤務先の労務担当または各都道府県の医療勤務環境改善支援センターにご確認ください。


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