辞めずに会社を作った薬剤師の話|勤務先の社内制度で法人の代表になった実例

辞めずに会社を作った薬剤師の話|勤務先の社内制度で法人の代表になった実例 医師のお金・資産形成

「医師 起業」で検索すると、出てくるのは同じ形の話ばかりです。

退職して、MBAを取って、資金調達をして、ヘルスケアスタートアップを作る。

立派な話ですが、いま外来を回している医師にとっては遠い世界です。そして、その中間がないように見えます。

ところが、福岡に第3の形の実例があります。退職せず、勤務先の社内制度を使って、グループ会社の代表になった薬剤師の話です。

なお、この記事は公開されている情報だけをもとに整理したものです。取材はしていません。数字は公表時点のものです。

何が起きたのか

事実だけ先に並べます。

運営会社

  1. 社名 … 株式会社オーガーデン
  2. 設立 … 2024年11月1日
  3. 所在地 … 福岡県福岡市中央区西中洲1-3 4F
  4. 代表者 … 竹重文貴 氏(薬剤師)
  5. 資本金 … 200万円
  6. 事業内容 … 医療従事者・関係者が集うコミュニティ共創事業/飲食店の経営/飲食経営コンサルティング

店舗(MEDs)

  1. 開店 … 2025年2月
  2. 面積 … 82.5平方メートル
  3. 席数 … カウンター6席とテーブル2卓
  4. 営業 … 20時から翌3時まで
  5. スタッフ … 現役の医療従事者34名がシフト制

医療従事者向けの会員制BARです。 医療従事者と同伴であれば一般の方も入店できる形になっています。

ここが本題です。独立していません

普通の起業の話なら「勤めていた薬局を辞めて」と続きます。違います。

公開されているインタビューによれば、経緯はこうです。

  1. 福岡大学薬学部を卒業し、2020年に大賀薬局へ入社
  2. 大分と福岡で6店舗を経験
  3. 社内の「チャレンジ制度」を使って、コミュニティBAR構想をプレゼン
  4. あっさり却下される
  5. 「医療従事者を支える会社としてコミュニティBARを運営することは理念に一致するはずだ」と説得を続ける
  6. 「一度形にしてみよう」と承諾を得る
  7. グループ会社として法人が設立され、本人が代表取締役に就く

4番と5番が一番大事なところだと思います。 一度落とされてから通しています。

そして、立ち上げの実務は、デザイン、業者の選定、仕入れ先、営業、アルバイトの採用までほぼ1人でやったとされています。

動機が「薬剤師の孤独」から来ています

なぜBARだったのか。本人の言葉として公開されているのは、次の2つです。

同じ患者さんのご自宅を訪問する医療従事者は医師、看護師、薬剤師、理学療法士、介護福祉士などたくさんいるのに、同じ時間帯に訪問することができませんでした

薬剤師は薬剤師で普段は薬局にこもりきりで孤独。同業者との情報交換のチャンスはほとんどありません

多職種連携が制度としては存在するのに、顔を合わせる時間が無い。 そこを平日の夜で埋める、という発想です。

これは医師にも当てはまります。病棟で名前だけ知っている他職種と、実際に話したことがあるでしょうか。

都合の悪い数字も出ています

ここが、この事例を信用できると思った理由です。

成功談だけを並べていません。

  1. 会員数 … 2,200名を突破
  2. 来客数 … 平日は約15名。金曜・土曜はもう少し多い
  3. 課題 … 客単価がなかなか上がらない
  4. 外からの声 … 「本業に専念すべきではないか」という否定的な意見

会員2,200名に対して、平日の来店が約15名です。 会員数と稼働は別物だということが、そのまま出ています。

そして6卓・34名体制で20時から翌3時まで。客単価が上がらないという課題は、この構成を見れば想像がつきます。

副業や新規事業の記事で、こういう数字が出てくることはまずありません。 参考になるのは、むしろこちらです。

収益の作り方を1つ足しています

もう1つ、実務的な工夫があります。

店内にSponsorボード(協賛パネル)を置き、関係各社の営業代行・採用・販売促進の手伝いも始めているとされています。

飲食の売上だけで見ない、という設計です。

医療従事者が2,200名登録している場という状態そのものを、別の商売に繋げている。BARの経営ではなく、医療従事者にリーチできる媒体として売っていると読めます。

会社の事業内容に「飲食経営コンサルティング」が入っているのも、同じ方向です。

医師が真似できる部分、できない部分

正直に分けます。

真似しにくいところ

  1. 病院に「チャレンジ制度」はほぼありません。 社内公募で新規事業を立ち上げる仕組みを持つ病院は稀です
  2. 医師は労働時間の上限規制の対象です。 夜間の事業に関わる場合、その時間の扱いを整理する必要があります

→ 外勤とバイトは労働時間の上限に通算される

真似できるところ

  1. 退職を前提にしないという発想そのもの
  2. 勤務先の理念と接続する形で提案するという通し方
  3. 最初から法人を別に立てること。勤務先の事業として抱えるのではなく、グループ会社にして代表を置く形
  4. 飲食や小売の売上だけを収益と考えない設計

3番が実務的に効きます。 勤務先の中の一部門として作ると、人事異動で消えます。法人を分けておけば残ります。

医師なら、どの枠を使えるか

病院に社内公募制度はなくても、既存の枠はあります。

  1. 医療法人の付帯業務 — 医療法で認められている範囲であれば、法人として別事業を持てます
  2. 大学発ベンチャー — 大学にいるなら、産学連携の窓口が制度として存在します
  3. MS法人 — すでに持っているなら、事業を足す形が取れます

いずれも「辞めてから考える」より、いま所属している組織の中に枠がないかを先に探す、という順番です。

本人の展望

将来について、こう語られています。

軌道に乗れば全国に展開していくのも面白いのではないかと思っています。地域医療に対して奉仕していくという中核にある精神を忘れないようにしながら、フランチャイズ展開なども視野に、これからも挑戦を続けていきます

福岡で学会があるときに、医師が二次会で立ち寄ることもあるそうです。 学会は開催地が動くので、全国展開の話とは相性が良いのかもしれません。

まとめ

  1. 医療従事者の起業は「退職してスタートアップ」ばかりが記事になるが、第3の道がある
  2. 勤務先の社内チャレンジ制度を使い、退職せずにグループ会社の代表に就いた実例がある
  3. 一度却下されてから、理念と接続する形で説得して通している
  4. 規模は82.5㎡・6卓・スタッフ34名のシフト制・20時から翌3時
  5. 会員2,200名に対し、平日の来店は約15名。 客単価は課題として公表されている
  6. 飲食の売上だけで設計していない。 協賛と営業代行を足している
  7. 医師が真似するなら、社内公募ではなく医療法人の付帯業務・大学発ベンチャー・MS法人の枠を探すほうが現実的

「辞めるか、こっそりやるか」の二択ではありません。 所属したまま、正面から作る道があります。

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この記事について

この記事は、株式会社オーガーデンの公式サイト、および公開されているインタビュー記事をもとに整理したものです。取材は行っていません。 数字はいずれも公表時点のものであり、現在の状況とは異なる可能性があります。店舗の利用条件については、必ず公式の案内をご確認ください。

なお、記事の掲載にあたって金銭の授受はありません。

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