ミノキシジルはなぜアンドロゲン非依存なのか|降圧薬から始まった薬の話

AGA・薄毛

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AGA治療の話をすると、たいていフィナステリドとミノキシジルが並んで出てきます。同じ棚に置かれているので、似たような薬だと思われがちです。

実際にはまったく別の薬です。 生まれも、狙う場所も違います。

そして、この違いが決定的な意味を持つ人たちがいます。アンドロゲンの経路に何らかの事情がある人です。

この記事では、ミノキシジルが何をしていて、何をしていないのかを整理します。

なお、この記事は一般的な情報提供です。個別の診断や治療の判断に用いるものではありません。

もともとは血圧の薬でした

ミノキシジルは、髪のために作られた薬ではありません。

1970年代、重症高血圧に対する経口の血管拡張薬として開発されました。強力に血圧を下げる薬で、他の降圧薬で管理できない患者に使われていました。

その使用中に、思わぬことが起きます。全身の毛が濃くなる患者が続出しました。 多毛症です。

降圧薬としては副作用ですが、脱毛の治療としては使えるのではないか。そこから外用薬としての開発が始まり、いまの形になりました。

この出自は、単なる歴史の小話ではありません。ミノキシジルがホルモンの薬ではないという事実の、そのものだからです。

何をしている薬なのか

作用の中身は、いくつかの要素が重なっています。

1. ATP感受性カリウムチャネルを開く

これが降圧薬としての本来の作用です。血管平滑筋のカリウムチャネルを開いて血管を広げます。頭皮に塗った場合、毛包の周囲の血流が増えることが、効果の一部を説明すると考えられています。

2. 成長期を延ばし、休止期から成長期への移行を促す

より重要なのはこちらです。毛周期に直接働きかけます。休止期にとどまっていた毛包を成長期に押し出し、成長期の期間そのものを延ばします。

3. 毛包の血管新生に関わる因子を増やす

血管内皮増殖因子(VEGF)の発現が増えることが報告されています。毛乳頭の周囲に血管が作られることが、太い毛を維持する条件になります。

効き方に個人差が出る理由は、酵素にあります

ここは知っておく価値のある話です。

ミノキシジルは、そのままでは活性を持ちません。

頭皮の毛包にある硫酸転移酵素(SULT1A1)によって、ミノキシジル硫酸という活性型に変換されて、はじめて働きます。いわゆるプロドラッグです。

つまり、この酵素の活性が低い人では、同じ量を塗っても活性型が十分にできません。「塗っているのに効かない」という体感には、この個人差が関わっている可能性があります。

塗る量や回数を増やせば解決するという単純な話ではない、ということです。この酵素活性を測って反応を予測する試みは研究されていますが、日常の診療で誰でも測れる状態ではありません。

そして、ここが本題です

作用機序を並べたところで、書かれていないものに注目してください。

ミノキシジルは、5α還元酵素を阻害しません。アンドロゲン受容体にも結合しません。

フィナステリドとデュタステリドは、テストステロンをDHTに変える酵素を止める薬です。効くのは、その経路が原因になっている場合に限られます。

対してミノキシジルは、アンドロゲンの経路の外側から毛周期に働きかけます。原因がアンドロゲン経路のどこにあっても、あるいはアンドロゲン以外にあっても、独立して作用します。

この構造上の違いが決定的になる人たちがいます。

  1. アナボリックステロイドを使っていて、5α還元酵素阻害薬が原理的に効かない人
  2. SARMを使っていて、アンドロゲン受容体に直接結合するものが体内にある人
  3. テストステロン補充療法中で、外因性のアンドロゲン量が多い人
  4. 女性の脱毛のように、そもそも5α還元酵素阻害薬を使えない場合

これらの状況で、ミノキシジルは選択肢が1つだけ残る形になります。

薬剤ごとに効くのか効かないのかが分かれる仕組みについては、こちらで分解しています。

→ アナボリックステロイド使用者にAGA治療は効くのか

外用と内服は、扱いがまったく違います

ここは誤解が多いので、はっきり書きます。

外用ミノキシジルは、日本で一般用医薬品(第1類医薬品)として承認されています。 男性向けは5%、女性向けは1%の製剤があります。日本皮膚科学会の男性型脱毛症診療ガイドラインでも、外用ミノキシジルは推奨度Aとして扱われています。

内服のミノキシジルは、日本でAGAに対して承認されていません。 同じガイドラインで、内服ミノキシジルは「行うべきではない」とされています。

理由は副作用です。もともとが強力な降圧薬なので、全身に入ると次のようなことが起きます。

  1. 全身の多毛(顔、腕、背中を含む)
  2. 動悸、頻脈
  3. 浮腫、体重増加
  4. 血圧低下
  5. 心嚢液貯留を含む心血管系の有害事象

海外の一部では低用量で使われる例がありますが、日本での位置づけは上記のとおりです。個人輸入で内服を入手して自己管理している人がいますが、血圧と心電図を誰も見ていない状態で使うものではありません。

塗り始めると、いったん抜けます

外用を始めて2〜8週ほどで、抜け毛が増えることがあります。初期脱毛です。

これは休止期にとどまっていた古い毛が、下から押し上げてくる新しい毛に置き換わる過程で起きます。薬が働き始めた印であって、悪化ではありません。

ただし体感としては最悪です。ここでやめてしまう人が非常に多い。判定するのは6か月後です。

やめると、戻ります

もう1つ、必ず伝えていることがあります。

ミノキシジルは、続けている間だけ効きます。 中止すると、数か月で治療前の状態に向かって戻ります。生やした毛を固定する薬ではなく、毛周期を押し続ける薬だからです。

これはフィナステリドも同じです。始める前に、続けられる費用と手間かどうかを考えておいたほうがいい。

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外用ミノキシジル(第1類医薬品)

壮年性脱毛症における発毛、育毛、脱毛の進行予防を効能とする一般用医薬品です。第1類医薬品のため、購入時に薬剤師による確認が入ります。使用前に添付文書を読み、循環器の持病がある人は医師または薬剤師に相談してください。

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頭皮が荒れる人へ

外用でよくあるトラブルは、かゆみと赤みです。原因は2つに分かれます。

  1. ミノキシジルそのものによる刺激
  2. 製剤に含まれるプロピレングリコールによる接触皮膚炎

2番目のほうが多い。 この場合、プロピレングリコールを含まない基剤の製剤や、泡状の製剤に変えると使い続けられることがあります。荒れたまま塗り続けると、炎症でかえって毛の状態が悪くなります。

また、脂漏性皮膚炎が併存していると刺激が強く出ます。先にそちらを治療するほうが順番として正しい。

まとめ

  1. ミノキシジルは降圧薬として生まれ、多毛という副作用から脱毛の薬になった
  2. 毛周期に直接働き、成長期を延ばす
  3. 頭皮の酵素で活性型に変わるため、効き方に個人差が出る
  4. 5α還元酵素にもアンドロゲン受容体にも触れない
  5. だからアンドロゲン経路に事情がある人でも、独立して働く
  6. 外用は承認薬、内服はAGAに対して承認されていない
  7. やめれば戻る

フィナステリドが効かない状況でも、ミノキシジルまで諦める必要はありません。 効く理由がまったく別だからです。

自分の場合に何が効くのかを、医師に組んでもらう

外用だけでいくのか、内服と併用するのか、そもそもAGA以外が混ざっていないのか。ここを決めるのに市販薬の説明書は役に立ちません。オンライン診療なら、事情を含めて相談できます。

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ご注意

この記事は一般的な情報提供であり、個別の治療を指示するものではありません。第1類医薬品の使用にあたっては添付文書を確認し、薬剤師または医師に相談してください。内服ミノキシジルは日本でAGAに対して承認されておらず、この記事はその使用を推奨するものではありません。

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