当直明けに日勤をこなした日、何時間働いたことになっているでしょうか。
書類の上では8時間です。体の上では36時間です。
この2つは別の物差しで、混ぜると判断を誤ります。
この記事は一般的な情報提供であり、個別の労務判断を示すものではありません。
法的な労働時間は「上限を超えたか」しか見ていない
2024年4月から医師の時間外労働に上限が入りました。A水準で年960時間、連携B・B・C水準で年1,860時間という枠です。
ここで押さえておきたいのは、この枠は健康状態を測るものではないという点です。
枠は「この線を超えたら違法」を定めています。超えていなければ安全、という意味ではありません。
さらに、当直は宿日直許可があれば労働時間に算入されません。許可が下りている病院では、16時間病院にいて何度も起こされても、労働時間はゼロとして扱われます。
書類の上の数字が小さいことと、体が回復していることは、まったく別の話です。
体の側で起きていること
連続して起きている時間が伸びると、作業能力は直線的には落ちません。ある時点から急に落ちます。
17時間の連続覚醒で、血中アルコール濃度0.05%相当の作業能力低下に相当するという報告が知られています。24時間を超えると0.1%相当です。
当直に入って翌日の夕方まで続けば、連続覚醒は30時間を超えます。
しかも本人に自覚がありません。眠気として感じられるのは一部で、判断の精度が落ちていることは自覚できません。「意外といける」と感じている状態が、いちばん危険です。
睡眠負債は翌日では返せない
当直中に2時間眠れたとして、通常の6時間睡眠との差は4時間です。
この4時間は、翌日8時間寝ても戻りません。回復には数日かかります。週2回の当直を続けると、返しきる前に次が来ます。
蓄積は自覚されません。慣れたと感じているとき、実際には低い水準で安定しているだけ、ということが起こります。
自分の数字で出す
医師の勤務疲労度メーターは、法的な労働時間と生理的な疲労を分けて表示するように作ってあります。
- 月の勤務時間が上限のどこにいるか
- 連続覚醒時間と睡眠負債から見て、体がどの段階にいるか
この2つは別々に出ます。上限に余裕があるのに疲労が危険域、という結果はふつうに出ます。それが実態だからです。
登録は不要です。入力内容はサーバーに送っていません。データベースもCookieも持たせていないので、勤務の内容が外に残ることはありません。
数字が出たあとに動かせるもの
当直明けの運転。判断する主体が判断できる状態にないので、その場で決めるのではなく、事前に決めておくのが安全です。道路交通法66条は過労状態での運転を禁じており、事故の有無を問いません。
当直の回数。減らす交渉は難しいのですが、数字があると話が具体的になります。「きつい」ではなく「連続覚醒が月に何回30時間を超えているか」で話せます。
外勤の入れ方。明けからそのまま外勤へ移動する日が、いちばん危険です。時間帯をずらせるなら、そこだけでも動かす価値があります。
働き方そのもの。実質的な時給が割に合っているかは、勤務医の「真の」時給メーターで出せます。疲労と報酬を並べて見ると、判断材料になります。
まとめ
- 労働時間の上限は、健康を測る物差しではない
- 宿日直許可があれば当直は労働時間に入らない。書類の数字は小さく出る
- 連続覚醒が伸びると作業能力は急に落ち、本人に自覚がない
- 睡眠負債は翌日では返せない。週2回の当直では追いつかない
- 上限に余裕があるのに疲労が危険域、はふつうに起きる


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