医師の働き方改革の説明を読むと、ほとんどの資料に「ただし、C-1水準が適用される臨床研修医については別のルールがあります」という注記が付いています。
その中身まで説明している資料は多くありません。
研修医は、他の医師より手厚い措置の対象になっています。この記事では、どこが違うのかを整理します。
なお、この記事は一般的な情報提供です。個別の適用については、勤務先の労務担当か、各都道府県の医療勤務環境改善支援センターに確認してください。
C-1水準とは何か
まず位置づけから。
C-1水準は、臨床研修・専門研修のために設けられた特例水準です。年間の時間外・休日労働の上限は1,860時間で、B水準と同じ数字になります。
ただし、この水準は自動的に適用されるものではありません。都道府県が医療機関を指定した場合に限られます。
水準の全体像は、こちらで整理しています。
違いは、連続勤務時間の上限です
研修医以外の医師に適用されるルールは2つです。
- 始業から24時間以内に9時間の継続した休息(連続勤務15時間)
- 始業から46時間以内に18時間の継続した休息(連続勤務28時間)
C-1水準が適用される臨床研修医は、2番が置き換わります。
- 始業から24時間以内に9時間の継続した休息(連続勤務15時間)
- 始業から48時間以内に24時間の継続した休息(連続勤務24時間)
28時間ではなく24時間です。 そして休息は18時間ではなく24時間になります。
厚生労働省は、この位置づけをこう説明しています。
C1水準が適用される臨床研修医については、より手厚い追加的健康確保措置が講じられます
理由も明記されています。入職して間もない時期であることが前提に置かれています。
2番が使えるのは、指導医に合わせる必要がある場合です
研修医の2番目のルールには、適用の条件があります。
研修医以外の医師の場合、46時間で18時間のルールを使えるのは宿日直許可のない宿日直に従事する場合だけでした。
研修医の場合は違います。適用されるのは、臨床研修における必要性から、指導医の勤務に合わせた24時間の連続勤務時間とする必要がある場合です。
根拠が「宿日直」ではなく「指導医に合わせる必要」に変わっています。
勤務間インターバルの一般ルールは、こちらで整理しています。
→ 勤務間インターバルと代償休息|当直明けに何時間休めるのか
休息は「事前に予定されたもの」でなければなりません
これは研修医に限らない話ですが、研修医のシフトでは特に効きます。
厚生労働省は、継続した休息時間は事前に勤務シフト等で予定されたものであることを原則とするとしています。そのうえで、次の例を挙げています。
事前に勤務シフト等で予定された休息時間が8時間であり、当日、たまたま休息時間を1時間延長して9時間の継続した休息時間を確保することができた、といったケースは、適当ではない
結果として休めたかどうかではなく、最初からそう組まれていたかどうかで判断されます。
代償休息は「発生しないようにする」のが原則です
ここが、研修医にとっていちばん大きな違いです。
厚生労働省の資料には、こうあります。
Cー1水準が適用されている臨床研修医については、代償休息が発生しないように勤務間インターバルの確保を徹底することが原則です
まず「発生させない」が原則です。 そのうえで、代償休息を付与する形の研修を行うには、3つの要件を満たす必要があります。
- 臨床研修における必要性から、オンコール又は宿日直許可のある宿日直への従事が必要な場合に限ること
- 臨床研修医の募集時に、代償休息を付与する形式での研修を実施する旨を明示すること
- 代償休息の付与期限を守ること(次の項目で扱います)
2番は研修先選びに直結します。
代償休息を前提とした研修を行う病院は、募集の段階でその旨を明示しなければなりません。 募集要項に書かれているかどうかは、その病院の勤務がどう組まれているかを示す材料になります。
付与期限が、他の医師より短くなることがあります
研修医以外の医師の場合、代償休息の期限は労働が発生した日の属する月の翌月末まででした。
研修医の場合は、次のいずれか早い日までとされています。
- 勤務間インターバル終了後に労働した日の属する、診療科ごとの研修期間の末日
- 勤務間インターバル終了後に労働した日の属する月の翌月末日
診療科のローテーションが終わる前に処理する、という考え方です。
1番のほうが早いにもかかわらず、やむを得ず1番までに付与できない場合には、例外的に2番までとすることが認められています。
ローテーション終了間際に呼ばれた場合は、この例外に当たる可能性があります。
宿日直許可のある当直中に呼ばれた場合
もう1つ、扱いが変わる点があります。
宿日直許可のある宿日直に9時間以上従事している間に、通常の勤務時間と同じ業務が発生して十分な睡眠が確保できなかった場合、一般の医師については、管理者は休息を事後的に付与する配慮義務を負います。
C-1水準が適用される臨床研修医については代償休息の付与は義務となります
配慮義務ではなく、義務です。 ここは明確に強い扱いになっています。
宿日直許可そのものの仕組みは、こちらで整理しています。
→ 宿日直許可と当直|あなたのその当直は労働時間に入らないのか
長時間手術の日には、別の例外があります
研修医に限らず、手術に入る医師全体に関わる例外です。
代償休息を前提とした勤務シフトを組むことは、原則として認められていません。ただし、長時間の手術(必要な術後の対応を含む)により、個人が連続して15時間を超える対応が必要な業務が予定されている場合については、代償休息の付与を前提とした運用が認められています。
ただし、その場合の期限は翌月末ではありません。
医師の健康確保の観点から、その業務の終了後すぐ(次の業務開始まで)に付与する必要があるとされています。
長時間手術の翌日にそのまま通常勤務、という組み方は想定されていません。
面接指導は、研修医も対象です
上限が1,860時間の水準なので、面接指導と休息時間の確保はどちらも義務になります。
面接指導の対象は、時間外・休日労働が月100時間以上になると見込まれる医師です。研修医も例外ではありません。
→ 長時間労働医師の面接指導|受けるのは義務なのか、誰がやるのか
面接指導のあとに作られる意見書は、病院が措置を書き込む前に本人が受け取ります。 研修医であっても同じ扱いです。
守られているかは、行政が確認します
最後に、履行の確保についてです。
追加的健康確保措置は医療法で実施が義務づけられているため、医療機関が所在する都道府県が、医療法第25条第1項に基づく立入検査において、関係書類の確認により、面接指導や勤務間インターバルが適切に実施されているかを確認します。
病院の内部で完結する話ではありません。
研修先を選ぶときに確認すること
これから研修先を決める人は、次の点を確認できます。
- その病院がC-1水準の指定を受けているか
- 代償休息を付与する形式での研修を実施する旨が、募集要項に明示されているか
- 当直に宿日直許可があるか、その範囲はどこまでか
- 連続勤務が24時間で区切られたシフトになっているか
2番は、書かれていること自体が悪いわけではありません。 明示は要件なので、書いてある病院はルールに沿って運用しているとも読めます。書かれていないのに代償休息が発生している状態のほうが問題です。
まとめ
- C-1水準は臨床研修・専門研修のための特例水準で、上限は年1,860時間
- 適用は、都道府県が医療機関を指定した場合に限られる
- 研修医の連続勤務時間制限は28時間ではなく24時間。休息は24時間
- 2番目のルールが使えるのは、指導医の勤務に合わせる必要がある場合
- 休息は事前にシフトで予定されたものであることが原則
- 代償休息は発生させないことが原則
- 代償休息つきの研修は、募集時に明示することが要件
- 付与期限は、診療科ごとの研修期間の末日か翌月末日の、早いほう
- 宿日直許可のある当直中に呼ばれた場合、研修医は配慮義務ではなく義務
- 長時間手術による例外では、代償休息は業務終了後すぐに付与する
- 履行状況は、都道府県の立入検査で確認される
研修医のルールは、厳しいのではなく手厚い側です。 自分に適用される数字が24時間なのか28時間なのかは、確認する価値があります。
関連記事
- B水準の病院は全国に477施設|47都道府県の公表資料を全部数えました
- 医師の働き方改革|あなたの上限は何時間になったのか
- 勤務間インターバルと代償休息|当直明けに何時間休めるのか
- 宿日直許可と当直|あなたのその当直は労働時間に入らないのか
- 医師の自己研鑽は労働時間に入るのか|厚生労働省が引いた3つの線
ご注意
この記事は一般的な情報提供であり、個別の労務判断を示すものではありません。記載内容は厚生労働省が公開している「医師の勤務間インターバルの仕組みについて」および関連資料をもとに整理していますが、制度は見直しが進められており、要件や数字が変わることがあります。自分に適用される水準や、研修先での具体的な運用については、研修先の労務担当または各都道府県の医療勤務環境改善支援センターにご確認ください。


コメント