退職金は、日本の税制で最も優遇されている所得です。ただしその優遇は自動では最大化されず、受け取り方を間違えると、本来払わなくてよい税金を払うことになります。
この記事では、退職金にかかる税金の仕組みと、医師が受け取り前に確認すべき節税の手順を解説します。退職金制度そのものの話は医師の退職金を先にどうぞ。
なお、この記事は一般的な情報提供であり、税務助言ではありません。金額が大きい判断なので、実行前に税理士へ確認してください。
退職金の税金はなぜ安いのか — 2つの優遇
退職金には、給与にはない優遇が2つあります。
- 退職所得控除: 勤続20年までは年40万円、20年超の部分は年70万円が控除されます。勤続30年なら、40万円×20年+70万円×10年で1,500万円まで非課税です
- 2分の1課税: 控除後の金額を、さらに半分にしてから税率をかけます
さらに、退職所得は他の所得と分離して課税されるため、給与の高い医師でも退職金には低い税率から適用されます。同じ2,000万円でも、給与でもらうか退職金でもらうかで、手取りは数百万円単位で変わり得るのです。
医師特有の論点 — 「複数回受け取る」人が多い
医師は転職が多く、退職金を複数の職場から時期をずらして受け取るケースが珍しくありません。ここに落とし穴があります。
退職所得控除は勤続年数で計算しますが、短期間に複数の退職金を受け取ると、控除の勤続年数が重複調整され、満額使えない場合があります。特に、iDeCoの一時金受け取りと勤務先の退職金が近い時期に重なるケースは要注意です。
原則として、受け取りの間隔を空けるほど控除は有利に働きます。複数の退職金・一時金が見えている医師は、「どれを、いつ、どの順で」受け取るかを事前に設計する価値があります。
節税の手順4ステップ
ステップ1: 受け取り予定を棚卸しする
勤務先の退職金、iDeCo、小規模企業共済(開業医)、医療法人からの役員退職金。将来受け取る可能性のある一時金をすべて書き出します。
ステップ2: 退職所得控除を試算する
それぞれの勤続・加入年数から控除額を計算し、一時金がどこまで非課税で受け取れるかを把握します。
ステップ3: 受け取り順と間隔を設計する
重複調整のルールを踏まえ、受け取り時期をずらせるものはずらします。iDeCoは受給開始時期に幅があるため、調整弁として使いやすい制度です。
ステップ4: 「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出する
勤務先経由で提出するこの書類を出さないと、退職金に一律20.42%の源泉徴収がかかります(確定申告で取り戻せますが、手間と一時的な資金拘束が生じます)。提出するだけの簡単な書類なので、忘れないでください。
受け取った後 — まとまったお金の扱い
退職金は、金融機関にとって最大の営業チャンスです。「退職金専用プラン」の名で、手数料の高い商品を提案されることが多々あります。
原則はシンプルです。すぐに全額を動かさないこと。生活防衛資金を確保し、残りは新NISAなどの非課税枠を軸に、時間をかけて配分してください。全体の順序は医師の節税まとめと資産形成の記事群で整理しています。
まとめ
退職金は、退職所得控除と2分の1課税・分離課税により、最も税負担の軽い受け取り方です。医師は複数回受け取るケースが多く、控除の重複調整とiDeCoとの受け取り時期が最大の論点になります。
手順は、一時金の棚卸し、控除の試算、受け取り順の設計、受給申告書の提出の4つ。金額が大きいだけに、実行前の税理士確認を惜しまないでください。
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